日本の50社を含むアジア太平洋地域にある253社の金融機関に調査を行ったところ、大半の金融機関が、様々な犯罪が増加している、と考えていることがわかりました。
デジタル決済およびオンラインバンキングの利用は、新型コロナウイルスのパンデミック期間中にさらに拡大し、その結果、問題がますます深刻化しています。調査によると、決済に関わる分野、特にEコマースや小売業、また、法律、会計、不動産サービスといった第三者の専門家が関与する取引は、マネーロンダリングのリスクがより高いと認識されていることがわかっています。
それと同時に、経済制裁の複雑化、暗号通貨の発展、犯罪者による技術利用の高度化によって、コンプライアンスにかかるコストが増加しています。偽造アカウント情報、不正取引、資金や資産の最終的受益者の特定は、ますます困難になっており、金融機関は、より複雑で時間のかかる本人確認(KYC)およびデューデリジェンスを実施する必要にさらされています。
オンライン金融サービスの利用拡大も、厳しい規制要件の規定がある顧客オンボーディング業務の大幅な増加につながっています。本人確認(KYC)およびマネーロンダリング対策(AML)で発生する大量のアラートの取り扱いは、多くの金融機関で問題になっており、今後も増価する見込みとなっています。回答した金融機関の65%は、来年もアラートの件数が平均で9%増加すると見込んでいます。
日本の金融機関の70%は、この状況に対して、コンプライアンス・マネーロンダリング対策部門を増強して対応していると回答しています。そのため、コンプライアンスの専門家に対する需要は、あらゆるレベルで高くなっています。71%の金融機関が初心者レベルのスタッフを増員しましたが、41%はかなりの経験のある人員を採用し、約4分の1は高度なスキルを持ったコンプライアンス専門家を採用しています。人件費は、金融機関にとって最大のコスト項目であり、コンプライアンスにかかる総コストの29%を占めています。
この調査によれば、コンプライアンスの作業負荷、増加する規制要件、複雑化する確認と情報収集が、生産性と企業の顧客獲得・維持能力の両方に影響を与えています。パンデミック期間中には、多くの金融機関が苦闘し、63%は新規口座開設の遅延があったと回答し、60%は顧客のデューデリジェンスに要する時間が長くなったがコンプライアンス業務への負担は軽くなっていない、と回答しています。金融機関のうち4分の3は、マネーロンダリング対策は顧客獲得に悪影響を与えていると回答しています。
この調査によって、オンボーディング時の本人確認(KYC)、アラートへの対応、規制に基づく報告を支援するために、より良いKYCおよびアナリティクスが求められていることがわかりました。多くの金融機関は、効果的なリスクプロファイルを作成し、規制当局向けの監査証跡を維持するのに必要なデータにアクセスできていないと回答しています。
これらの課題に対する解決策として、テクノロジーが注目されています。本調査によると、アジア太平洋地域の金融機関の半数が、リスク評価を改善するためのデータ、ツール、テクノロジーに投資しています。また、コンプライアンス予算をテクノロジーにより多く配分している金融機関では、金融犯罪対策コンプライアンスにかける費用が全体的に少なく、年間1680万ドルであるのに対し、技術に対する予算配分の少ない金融機関では2960万ドルとなっていることが明らかになっています。
デジタル時代の世界的な金融犯罪の増加により、デューデリジェンスおよびリスク評価に多層的なアプローチが重要となっています。タイムリーかつ正確なデータ、デジタルおよび物理的な情報、AIによるデータ分析と行動分析は、強力かつ能動的なツールであり、金融機関がコンプライアンスの課題に対処し、コストを管理し、カスタマーエクスペリエンスを保護することをサポートします。
LexisNexisによる「金融犯罪コンプライアンスの真のコスト」調査レポートについては、こちらをご覧ください。